FOUNDER'S STORY
プレゼントを忘れた日があった。
リメギフを作った本当の理由。
長嶺 明日香(ながみー)
リメギフ代表 / 2026年6月5日
正直に書きます。私には、大切な人へのプレゼントを「忘れた」日が、これまでに何度かありました。
忘れたといっても、その人を大切に思っていないわけでは決してありません。むしろ、大切に思っているからこそ、毎年プレゼントを選ぼうとしてきました。それでもある年は、仕事が立て込んでいて記念日の前日に「明日だった」と気づき、慌ててコンビニで何かを買って渡したことがありました。別のある年は、贈ろうと思っていた商品の入荷が間に合わず、結局メッセージカードだけになってしまったこともあります。
そして、そのたびに思い知らされました。贈る側は「ちょっと忙しかっただけ」と思っていても、贈られなかった側は「思い出してもらえなかった」と感じるのだと。受け取った側の表情の、ほんの一瞬の翳り。次の日、何でもないふりをしてくれた優しさ。何ヶ月か経って、ふとした会話の中で「あのとき、本当はちょっと寂しかった」と言われた時の罪悪感。
プレゼント1回分の出来事が、関係性にとっては想像以上に大きな意味を持つ。これは、私自身が痛みを通じて学んだ事実です。
事業開発・マーケティング・データ分析の世界にいた私が、なぜ「ギフト」だったのか
リメギフを始める前の私は、いわゆる「ビジネス職」の人間でした。事業開発、マーケティング、PL(損益計算書)の管理、KPIの設計、データ分析。数字とロジックで物事を判断する仕事を、ずっとやってきました。
私の周りには、ギフトサービスを立ち上げそうなタイプの人はあまりいません。ファッション業界出身でもなければ、フローリストでもなく、和菓子職人でもない。むしろ「贈り物選び、苦手なんですよね」と本人が言ってしまうような種類の人間です。
でも、だからこそ、です。
事業開発の現場で私が学んだのは、「自分が困っていること」は、たいてい他の多くの人も困っているという法則でした。記念日にプレゼント選びで頭を抱える時間、自分の好みではない相手の好みを推測する難しさ、贈った後で「本当に喜んでもらえたんだろうか」と確信が持てない曖昧さ。私が個人として困っていたこれらは、よくよく観察すると、ほぼ全員が同じように困っていました。
データを見ると、もっと明確でした。ギフト関連の年間検索ボリュームは桁違いに大きく、しかも「分からない」「迷う」「失敗」というネガティブな副詞と共起する割合が、他のショッピングカテゴリーよりずっと高い。つまり、商品はたくさんあるのに、選ぶプロセス自体が苦痛になっている人が多い。これは需要と供給のミスマッチで、しかも誰も根本的には解決していないテーマだ、と思いました。
「今まで贈ってたもの、実は欲しくなかった」と言われた日
リメギフを立ち上げる前、私は自分の記憶を遡って、自分が過去に贈ったプレゼントを一つひとつ思い出してみたことがあります。母に贈った高級ハンドクリーム、父に贈ったボールペン、当時の恋人に贈ったアクセサリー、友人の結婚式に贈った食器セット。
そして、本人たちに聞いてみました。「あれって、使ってる?」と。
返ってきた答えは、想像以上に厳しいものでした。「あ、あれね。ありがたかったんだけど、自分の好みと違ってちょっと使いにくくて」「もったいなくて使わずに取ってある」「実は香りがダメで…」。それぞれに、それぞれの「実は」がありました。気を遣わせないように笑顔で受け取ってくれたあの瞬間と、何ヶ月もしまわれたままの引き出しの中とのギャップ。
ショックでした。私は「贈った」と思っていたものが、相手にとっては「使えなかったもの」になっていた。これまで自分の善意だと思っていたものの、いくつかは押しつけだったのかもしれない、と感じました。
ある時、その経験を踏まえて、別の人へのプレゼントを「これまでとは違うやり方」で選んでみたことがあります。事前に何時間もかけて、相手の生活スタイル、最近の口癖、SNSで「いいね」を押している投稿の傾向、最近買い替えたもの、買い替えたいと言っていたもの、一切のリストを書き出して、その人の「現在地」を把握してから商品を絞り込みました。
結果は、驚くほど違いました。その時に贈ったものは、相手も心から喜んでくれて、今でも使い続けてくれています。ふとした会話の中で「あの時もらったやつ、毎日使ってる」と言われた瞬間の、自分の中で何かが噛み合った感覚を、私は今でも覚えています。
「ああ、こういうことだったのか」と思いました。プレゼントを選ぶというのは、自分の善意を渡すことではなく、相手の生活の延長線上にある「足りなかったもの」「ちょっと贅沢したいもの」を見つけてあげることだったのだと。
「AIに任せたほうが早い」と言われる時代に、なぜ人が選ぶのか
リメギフを立ち上げてから何度も聞かれた質問があります。「それ、ChatGPTで十分じゃないですか?」「Amazonのレコメンドで足りるんじゃないですか?」と。
この質問に対する私の答えは、いつも一つです。「最後の意思決定だけは、人がすべきだから」。
リメギフでも、提案を絞り込む過程ではデータベースを使いますし、ロジックも組んでいます。でも、最終的に「この人にはこれを贈ろう」と決める瞬間に、必ず人間の判断を挟むようにしています。なぜなら、贈り物には「論理で説明できない判断」が必ず存在するからです。
例えば、相手が乳製品アレルギーだったとしても、データには載っていないことがある。例えば、過去に同じブランドのものを贈っていたら、もう一度同じブランドはちょっと工夫が必要かもしれない。例えば、相手の家族構成が最近変わっていて、今までのライフスタイルとは少し違うものが似合うようになっているかもしれない。
こういう「文脈の微差」を拾うのは、データだけでは無理です。過去の関係性、最近の出来事、贈る側のキャラクター、贈られる側のキャラクター、その2人の関係性のニュアンス。これらを全部踏まえて「あ、これだ」と決められるのは、まだ人間にしかできない仕事だと、私は思っています。
AIは便利な道具です。提案を10候補に絞り込んだり、相場感をすぐに教えてくれたり、メッセージのドラフトを作ってくれたり、そういうところでは私たちも積極的に使います。でも、その10候補から「あなたなら、この人にこれを贈るべき」と決める瞬間は、コンシェルジュが人として責任を持って判断します。リメギフは、その「最後の判断を引き受けるサービス」だと思って運営しています。
なぜLINEで完結する形にしたのか
リメギフはLINE上で全てが完結します。これは、自分の経験から逆算した形でした。
プレゼントを忘れる人、迷う人、選びきれない人の共通点は、「考える時間とエネルギーが今、足りない」ことです。仕事の合間、移動中、子供を寝かしつけた後の少しだけ空いた時間。そういう細切れの時間で完結できるサービスでないと、結局また「明日でいいや」になってしまう。
LINEなら、通勤の電車の中で「相手は40代の母で、料理が好きで、最近膝が痛いと言ってた」と入力するだけで、提案が返ってくる。決済もそのまま。配送先入力もそのまま。これを別アプリを開いたり、新規会員登録したり、何度もログインし直したりせずに完結できる。これは、忙しい人の「やる気が一瞬出た時に終わらせられる」ことを最優先に考えた結果です。
事業開発の世界で繰り返し学んだのは、「人は便利だと思ったものでも、面倒の総量が一定を超えるとやらない」という法則です。10ステップあるサービスの完了率は、3ステップしかないサービスの完了率に絶対に勝てません。だったら、ギフト選びも3ステップ以内に収めたい。これがリメギフのプロダクト設計の出発点でした。
これからリメギフが目指していること
リメギフを通じて私が実現したいのは、「プレゼント選びに費やしていた時間を、大切な人と過ごす時間に変える」ことです。
プレゼント選びに2時間悩むくらいなら、その2時間で相手と電話するか、会いに行くか、手紙を書くほうがいい。本当に大切なのは、贈り物そのものではなく、贈り物を通じて伝わる「あなたのことを考えていた」というメッセージだからです。リメギフは、その時間を作るための道具でありたいと思っています。
そして、もう一つ、私が個人として大事にしていること。それは、「自分が忘れたあの日」を、これから他の誰かが経験しないようにすることです。リメギフを使えば、記念日の通知が届く。慌ててコンビニに走らなくていい。「今年も忘れずに贈ってくれた」と相手に感じてもらえる。
派手ではないかもしれません。でも、こういう「日常の中の小さな気持ちのすれ違い」を一つでも減らせるなら、リメギフが存在する意味があると、私は本気で思っています。
もし、この記事を読んでくださっているあなたが、今、誰かにプレゼントを贈ろうとしているのなら——どうか、悩む時間と、迷う時間を、私たちに渡してください。私たちはその時間を引き受けて、あなたが本当に大切にしたい時間に変える、お手伝いをします。
2026年6月
リメギフ代表 / 長嶺 明日香